結論 日本のホテル市場の見方は、(1) 観光庁宿泊統計でマクロの量、(2) JNTO訪日外客でインバウンドの量と国別構成、(3) ホテルREIT月次で運営収益の質、(4) JLL/CBRE Hotelsで取引キャップレートと投資動向、(5) 自治体観光統計と条例でエリア別の規制環境、の5系統を組み合わせるのが標準です。

日本のホテル市場をどう読むか?

マクロの量はマクロ統計(観光庁・JNTO)、ミクロの収益は運営者・REITの開示、価格・取引の動向はJLL/CBRE等のリサーチ、エリア別の規制環境は自治体の公表資料、と情報源を分けて読みます。1系統だけでは死角ができるため、必ず複数を組み合わせます。

情報源収録内容更新頻度意思決定への効き方
観光庁 宿泊旅行統計調査都道府県別の延べ宿泊者数・客室稼働率月次・四半期マクロの量と稼働の方向性
JNTO 訪日外客統計国別訪日外客数月次インバウンド需要の構成
観光庁 訪日外国人消費動向調査1人当たり消費額・宿泊費比率四半期単価形成の構造
ホテルREIT月次資料運営ホテルのADR・OCC・RevPAR月次運営収益の質と回復力
JLL Hotels Investment Report取引動向・キャップレート四半期・半期出口価値・投資判断
CBRE Hotels Research市場分析・取引事例四半期セグメント別の評価軸
不動産経済研究所新規開業・閉館・建設動向月次供給サイド
自治体 観光統計・条例エリア別の宿泊・規制環境随時エリア別の規制リスク
ARES(不動産証券化協会)不動産投資市場全般月次・四半期金融・市場のマクロ環境

訪日需要・宿泊統計の見方

観光庁の宿泊旅行統計調査は、月次・四半期で都道府県別・施設タイプ別の客室稼働率を、JNTOは国別の訪日外客数を、観光庁の訪日外国人消費動向調査は1人当たり消費額と宿泊費比率を、それぞれ公表します。3つを併読することで、量・単価・国別構成の3軸でマクロを把握できます。

観光庁 宿泊旅行統計調査

毎月下旬に前々月分のデータが公表されます。延べ宿泊者数(日本人・外国人)、客室稼働率(施設タイプ別:シティ・ビジネス・リゾート・旅館・簡易宿所)、都道府県別の動向が中心情報です。施設タイプ別のOCCを比較することで、ホテル種別の需給バランスを把握できます。

JNTO 訪日外客統計

毎月中旬に前月分のデータが公表されます。国別の訪日外客数、累計実績、過去最高更新の有無などが整理されており、インバウンド需要の構成を国別で把握できます。中国・韓国・台湾・香港・米国・タイ・豪州など主要市場の動きから、自施設の顧客構成と照合します。

観光庁 訪日外国人消費動向調査

四半期で訪日外国人の1人当たり消費額(宿泊費・買物代・飲食費・交通費等)を公表します。宿泊費の比率と総額の動向は、ホテル単価形成のマクロ要因として参考になります。

主要都市のADR・OCCはどこを見るか?

主要都市のADR・OCC・RevPARの実数値は、観光庁宿泊統計(OCCのみ)、STR/CoStar(有料)、HotelBank、ホテルREITの月次IR、JLL/CBREのレポートを組み合わせて把握します。都市別・グレード別の差を、自施設のCompetitive Setのポジションに重ねるのが実務的な使い方です。

都市別の特徴を整理すると以下の通りです。これは2026年5月時点の業界一般実勢の整理であり、最新値はそれぞれの公表資料で確認します。

  • 東京:シティ・ビジネス・ライフスタイルが厚く、インバウンド需要に支えられた高ADR・高OCC市場
  • 大阪:万博・MICE・インバウンドの混合需要、特区民泊と旅館業の使い分け
  • 京都:観光需要が厚く、地域調和手続・景観制度・京町家関連制度などの確認が開発判断に影響
  • 福岡:博多旧市街地の容積率特例、アジアインバウンドの玄関口
  • 札幌:冬季と夏季の需要変動、年間平均OCCの安定性に注意
  • 沖縄:リゾートと国内旅行・インバウンドの混合、季節性が強い

ホテルREIT月次資料の活用

ホテルREITの月次資料は、運営ホテルのADR・OCC・RevPARを把握する貴重な一次情報源です。運営形態(変動賃料・固定賃料・MC型)の違いに注意して、変動賃料・MC型のリート(JHR、インヴィンシブル、星野リート等)を中心に読みます。

主要なホテルREIT

REIT名運営形態の傾向主な特徴
ジャパン・ホテル・リート(JHR)変動賃料・MC型中心大型シティ・リゾートのポートフォリオ
インヴィンシブル投資法人変動賃料中心ビジネス・シティを幅広く保有
星野リゾート・リート固定賃料中心星野リゾートブランドが運営
いちごホテルリート固定賃料中心地方・中小型を含む
大江戸温泉リート固定賃料中心温泉旅館・リゾートに特化

月次資料の読み方

  • 変動賃料・MC型:実績ADR・OCC・RevPARの月次推移、Competitive Set比較
  • 固定賃料:賃料履歴、物件入替(取得・売却)、賃借人の信用力
  • 運営者交代・改装の予定:将来のNOI見通し
  • テナント別売上開示の粒度:詳細性の差で精読方法を変える

取引キャップレートと投資動向

日本のホテル取引キャップレートは、JLL Hotels Investment Report、CBRE Hotels、不動産経済研究所、ARESの市場調査で四半期・半期に整理されます。2026年時点では東京シティ4.0〜5.5%、地方リゾート6〜8%、温泉旅館10%超のレンジが目安。海外資本(GIC・ブラックストーン・PAG・KKR等)が活発な買い手層です。

取引動向を読むときは、以下の3軸で整理します。

  • セグメント別:シティ・ビジネス・リゾート・温泉旅館・アパートメントホテル
  • エリア別:東京・大阪・京都・福岡・札幌・沖縄・地方
  • 買い手層別:REIT・国内ファンド・海外PE・事業会社・個人投資家

市況の変化を意思決定にどう活かすか?

市況指標は、保有判断(NOI改善余地)、売却タイミング(出口キャップレート水準)、改装判断(投資回収期間)、運営委託契約の見直し(Performance Test再交渉)の4方向に翻訳します。

市況の変化意思決定への翻訳
ADR上昇・OCC高位安定保有継続、運営者の業績連動報酬の見直し、価格戦略の高単価シフト
OCC低下・需要鈍化運営委託のPerformance Test再交渉、改装による差別化検討
取引キャップレートのタイト化売却タイミングの検討、低キャップレートでの出口価値増
取引キャップレートの拡大保有を継続し収益改善、出口は次回サイクルへ
新規供給増加競合RevPAR Indexのモニタリング強化、運営差別化
規制強化(誘致規制等)既存物件の希少性プレミアム期待、新規開発は他エリア検討

よくある質問(FAQ)

日本のホテル市場はどう読めばよいですか?

観光庁宿泊統計(量)、JNTO訪日外客(インバウンド需要)、ホテルREIT月次資料(運営収益)、JLL/CBRE Hotels Investment Report(取引動向)、自治体観光統計(エリア別)の5系統を組み合わせ、量・単価・収益・取引・規制の5軸で立体的に読みます。

主要都市のADR・OCCはどこで確認できますか?

観光庁「宿泊旅行統計調査」が月次・四半期で都道府県別の客室稼働率を公表します。ADR・RevPARはSTR/CoStar、HotelBank、ホテルREITの月次IR、JLL/CBREのレポートで都市別・グレード別の値を確認できます。

ホテルREIT月次資料の見方は?

運営形態(変動賃料・固定賃料・MC型)の違いに注意します。変動賃料・MC型は実績ADR/OCC/RevPARが見やすく、固定賃料は賃料履歴と物件入替がポイントです。JHR、インヴィンシブル、星野リート、いちごリート、大江戸温泉リートなど、運営形態の異なる法人を併読すると市場の奥行きが見えます。

取引キャップレートはどこで確認できますか?

JLL Hotels Investment Report、CBRE Hotels、不動産経済研究所、ARESの市場調査が四半期・半期で公表する取引データから、グレード別・エリア別のレンジを把握します。個別案件の実績はNDAで非開示が多いため、公表案件のみを対象に整理するのが実務的です。

市況の変化は経営判断にどう活かしますか?

市況の変化は、保有判断(NOI改善余地)、売却タイミング(出口キャップレート水準)、改装判断(投資回収期間)、運営委託契約の見直し(Performance Test再交渉)の4方向に翻訳します。

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