延べ宿泊者数はどう動いたか?
2026年3月の延べ宿泊者数は5,546万人泊、前年同月比-0.1%。外国人は+1.8%ですが、日本人は-0.7%です。
全体5,546万人泊は前年同月比横ばいですが、内訳を見ると構造変化が進んでいます。外国人比率は27.2%(2025年3月25.5%、2019年3月20.4%)と上昇継続、特に都市部の集中度が高まっています。東京の外国人延べ宿泊者数は340万人泊、全国シェア22.5%。大阪は190万人泊で同12.6%、京都は120万人泊で同8.0%と、上位3都府県で外国人需要の43%を占めます。一方、日本人需要が-0.7%と微減なのは、円安・物価高による国内旅行の単価上昇と、出張需要のオンライン代替が背景にあります。投資判断としては、外国人比率30%超の物件はADR成長余地が大きく評価額上振れ、20%未満の物件は国内需要動向に依存度が高くキャップレートの相対的ワイドニング要因となります。
| 指標 | 2026年3月 | 前年同月比 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 延べ宿泊者数 全体 | 55,462,700人泊 | -0.1% | 全国の宿泊量は横ばい |
| 日本人延べ宿泊者数 | 40,387,170人泊 | -0.7% | 国内需要が全体の伸びを抑える |
| 外国人延べ宿泊者数 | 15,075,530人泊 | +1.8% | インバウンドは増加だが伸びは限定的 |
施設タイプ別の稼働差
施設タイプ別では、ビジネスホテルとシティホテルが70%台、旅館と簡易宿所が低位です。高稼働の施設と取り残される施設が同時に存在します。
施設タイプ別稼働の50ポイント以上の格差は、需給バランスの違いを反映しています。ビジネスホテル74.2%は2019年同月76.5%にほぼ復帰、シティホテル73.5%も同72.1%を上回ります。一方、簡易宿所24.0%(2019年同月35.8%から-11.8pt)は供給過多と質的劣化の二重苦です。2018年住宅宿泊事業法施行後の供給急増、コロナ期の運営者退出、再開業後の集客力低下が重なり、特に大阪・京都・東京の小規模ゲストハウスで稼働低迷が顕著です。旅館41.5%(+3.1pt)は高単価インバウンドの寄与で改善傾向、リゾートホテル58.0%(+0.6pt)は航空需要回復と国内連休需要に支えられています。これらの数字を踏まえると、簡易宿所はホテル業態への建替/転用、または運営委託先の入替が現実的選択肢、旅館はADR向上余地で評価額上昇局面と読めます。
| 施設タイプ | 2026年3月稼働率 | 前年同月差 | 経営上の論点 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 60.3% | -1.0ポイント | 全国平均だけでは判断しにくい |
| 旅館 | 41.5% | +3.1ポイント | 高付加価値化・食・温泉・体験で単価改善 |
| リゾートホテル | 58.0% | +0.6ポイント | 季節性と航空需要の影響が大きい |
| ビジネスホテル | 74.2% | -0.6ポイント | 稼働ではなくADRと直販比率が焦点 |
| シティホテル | 73.5% | -0.5ポイント | 料飲・宴会・高単価客層で差が出る |
| 簡易宿所 | 24.0% | -5.3ポイント | 供給過多・低単価・運営品質の課題が出やすい |
運営改善では何を見るか?
稼働率だけでは収益は見えません。ADR、RevPAR、清掃費、人件費、OTA手数料まで含めて、稼働を利益に変換できているかを確認します。
収益管理の実務では、OCC・ADR・RevPARの3指標に加えてGOP率(40-45%が標準)、TRevPAR(F&B含む総売上÷可能客室数)、人件費比率(売上比25-30%が目安)、OTA手数料比率(売上比8-12%)を月次でモニタリングします。例えばビジネスホテルが稼働74%を維持していても、ADRが市場平均比-10%、OTA比率が60%超ならRevPARはOCC65%の競合に劣後する可能性があります。シティホテルは宿泊以外のF&B・宴会収益が売上の35-50%を占めるため、レストラン外販比率や宴会平均単価の四半期推移が重要指標。旅館は1泊2食の食材費が売上の25-30%を占めるため、食材原価率と人件費を吸収できる販売単価(平均3.5-5万円/室)が損益分岐点。簡易宿所は稼働24%では運営委託費・清掃費を回収できないケースが多く、用途転換(賃貸住宅、サービスアパート、シェアハウス)、減損処理、運営者切替の判断局面です。
| 施設タイプ | 注視KPI | 意思決定への翻訳 |
|---|---|---|
| ビジネスホテル | ADR、直販比率 | レベマネ・チャネル戦略見直し |
| シティホテル | TRevPAR、F&B粗利率 | F&B・宴会の収益再設計 |
| リゾート | 季節別ADR、長期滞在率 | シーズン別販売設計 |
| 旅館 | 食材原価率、平均販売単価 | 食事プラン・コース見直し |
| 簡易宿所 | 固定費回収可否 | 撤退・転用・運営切替 |
- ビジネスホテルは稼働率74%台でも、価格を上げられていないなら収益改善余地がある。
- シティホテルは宿泊だけでなく、朝食・宴会・バー・ラウンジの粗利を見る。
- 旅館は稼働率より、食材費・人件費を吸収できる販売単価を設計する。
- 簡易宿所は稼働率24.0%を前提に、撤退・用途転換・運営委託変更も検討対象になる。