結論 令和7年度の民間非居住用建築物の着工床面積は3,246万㎡で前年度比-6.6%、4年連続の減少です。一方、宿泊業・飲食サービス業用は248万㎡で前年度比+15.8%。ホテル供給は全体の建築投資縮小とは別の動きをしている可能性があります。

建築着工統計のどこを見るか?

ホテル供給を見るときは、住宅着工ではなく民間非居住建築物の用途別床面積を確認します。宿泊・飲食サービス業用はホテル、旅館、飲食施設などを含むため、ホテル単体の数字ではありませんが、供給圧力の先行指標になります。実務的には着工から開業まで18〜30カ月、コンバージョン案件で12〜18カ月のリードタイムを置いて稼働市場に出てくるため、令和7年度の着工は2027〜2028年の都市別供給増として読み解くのが基本です。観光庁の宿泊旅行統計と組み合わせると、地域別の需要伸長と供給増のミスマッチをタイミングで捉えられます。

項目令和7年度前年度比読み方
全建築物の着工床面積9,271万㎡-11.3%建築投資全体は縮小
民間建築主 非居住用3,246万㎡-6.6%4年連続の減少
宿泊業・飲食サービス業用248万㎡+15.8%宿泊・飲食関連は増加
事務所415万㎡-10.6%オフィス系は弱い
店舗360万㎡-4.9%商業施設も再び減少
倉庫902万㎡-12.1%物流も4年連続減少

ホテル供給への示唆

宿泊・飲食サービス業用の増加は、数年後の客室供給増につながる可能性があります。需要が強いエリアでも、供給増のタイミングを読まないとADRが崩れます。2026年5月時点では、東京・大阪・京都の主要都市部でホテル業全体のADRがコロナ前比+30〜50%に達しており、デベロッパー・ファンドの参入意欲が建築費上昇・金利上昇局面でも持続している局面です。一方で人件費上昇と工期延伸により、計画ストックの実工事着手率は10〜20%程度の延期・縮小が観測されています。出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」、観光庁「宿泊旅行統計調査」。

  • 着工床面積は、開業時期よりも早く出るため、供給の先行指標になる。
  • 宿泊・飲食サービス業用はホテル単体ではないため、自治体の開業情報や旅館業許可一覧と組み合わせる。
  • 建築費・人件費が高い局面では、着工しても計画変更や延期が起きる可能性がある。
  • 需給が強い都市ほど、新規供給後のRevPAR Indexの変化を見る。
  • ラグジュアリー(外資系含む)/アッパースケール/ミッドスケール/エコノミーで開業時期と供給インパクトが異なる。

業態別・地域別の動向(読み取りの視点)

着工統計は用途別の床面積でしか出ないため、業態別・地域別のホテル供給インパクトを読むには、ホテルチェーンの開業リリース、自治体の旅館業許可一覧、不動産投資家向けレポート(CBRE・JLL・サヴィルズ等)を重ねます。2025〜2026年の傾向として、東京・大阪はラグジュアリー/アッパースケールの新規開業が集中し、地方はビジネスホテル新規開発が抑制される一方、温泉地ではブランドオペレーターによるリブランド・リノベ案件が増加しています。下表は、業態と地域の組み合わせで供給圧力をどう読むかの目安です。

業態主要エリア2025〜2026年の動向RevPAR Index注視ポイント
ラグジュアリー(外資系含む)東京・大阪・京都・沖縄新規開業ラッシュ、ブランド乱立ADR競合、上位帯のSegmentation
アッパースケール主要都市部大型開発、コンバージョン案件増F&B収益・MICE需要との連動
ミッドスケール地方政令市・観光地国内チェーン主導、選別的開発OCC維持と料金転嫁の余地
エコノミー・ビジネス地方都市新規開業は抑制、リプレース中心労務確保・直販比率
温泉旅館・リゾート主要温泉地・観光地リブランド・高付加価値化補助金活用客単価・滞在日数

開発判断で使う実務フロー

建築着工統計は単独で使わず、宿泊統計、旅館業許可、開業リリース、地価、建築費を重ねます。

  1. 国交省の建築着工統計で宿泊・飲食サービス業用の床面積を確認する。
  2. 都道府県・市区町村の旅館業許可一覧で施設数の増加を見る。
  3. ホテルチェーン・デベロッパーの開業リリースで客室数を補足する。
  4. 観光庁宿泊旅行統計で客室稼働率と延べ宿泊者数を確認する。
  5. 投資判断では、供給増後もADRを維持できるかをストレステストする。

出典・一次情報

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